『古建築を復元する 過去と現在の架け橋』海野 聡/2017/吉川弘文館
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私の印象を先に言えば、文句なくここ数年で一番面白かった本です。
“復元”とは、すでに失われてしまっている歴史上の建物を、現代に再現することです。この本では、現在は見ることができないはずの歴史上の建物を、実際の建物として“復元”されるまでの思考の過程が紹介されています。
私が“復元建物”に初めて触れたのは、小学校の教科書で見た登呂遺跡の竪穴住居だったでしょうか。復元の対象とされる建物は、決して大きいとは言えなかった竪穴住居から、吉野ケ里遺跡(佐賀県)や三内丸山遺跡(青森県)などにあった大型の建物に、さらには集落や城へと大きくなっています。「どのようにして、見たこのない建物の大きさや形が決められたのだろうか」との疑問は誰もが感じることだと思いますが、そんな疑問に答えてくれています。
この本で主に紹介されているのは平城宮跡(奈良県)を中心とした奈良時代の宮殿や寺です(表紙の写真は平城宮跡の大極殿(奈良県奈良市)です)。著者は奈良文化財研究所の研究員(発行当時)で、建築史を専門とする研究者でもあります。奈良文化財研究所は、奈良時代の都であった平城京を中心に発掘調査などをしている国の研究機関で、著者は発掘調査が行われる遺跡に建築史の研究者として関わり、遺跡にあった歴史上の建造物の復元に取り組んでこられた方です。
著者は書かれています。「復元はいわば遺跡と当時の建築をつなぐ複雑怪奇なパズルである」と。確かに、読み進むにしたがって、複雑怪奇であったはずのパズルが解けていく、そんな爽快感がこの本の醍醐味です。
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