結界・柵


【データ】
■場 所 神奈川県箱根町(箱根美術館)
■年 代 現代 
■採 集 2017年5月

立入禁止を示す柵。結界(けっかい)とも言う。

木で作られた枕(足)、土台、方立の間に竹垣を挟む。竹垣は7本の丸竹を縦に、3本の丸竹を横に渡し棕櫚縄で結ぶ。竹垣の固定は、両方立に小穴を彫って横竹をはめ込んでいる。

土台に丸竹の雨染が見えることから、竹垣は取り替えられたことがあるようだ。

移動可能な作りだが、下の敷石と作り置いたようにぴったりの大きさになっている。また、縦の竹を外側に、横の竹を内側になるように置くのも、竹垣の作り方と同じ(四つ目垣では内側に焼杉丸太の支柱を立てるため支柱に結びつける横竹は内側に、横竹に結びつける縦竹はさらにその外側になる)。

作り方だけでなく、配置にまで気が遣われている。作法が守られていると言った方が良いかも。


結界は二つの性格の異なる空間を仕切るもの。境をなすもの。

仏教用語から始まっており、仕切るというよりは「ある領域を作り出すもの」のほうが正しい意味のようです。つまり、結界に仕切られた内側に意味を持たせているわけです。

また、茶道においては「その場の決まり事(暗黙のルール)を視覚化する仕掛」の意味があるようです。

庭の主人は、木と竹で作られたこの結界で、この先に護られるべき特別な空間があることを人に認識させた上で、立入を制限しているわけです。

結界が主人に代わって「この先は特別な場所です。立ち入りはご遠慮ください。事情を察して大人の対応をお願いします。」と無言の圧力をかけているわけです。言葉にするといかにも無粋で野暮になってしまいます。

ここに「立入禁止」と書かれた札が置かれていないのは(そんなことの方が最近は多くてゲッソリしますが)、「主人は客人を信じ、客人は場の決まり事を尊重する」という暗黙のルールが生きているからなのでしょう。

この庭はいつ来ても気持ちがいいはずです。


「そんな暗黙のルール、今は守ってもらえない。」「知らない」「書いた方が丁寧で親切(そんな優しい方は多言語で表示したりもする)」とのご意見がありそうです。

ですが、こうした暗黙のルール(文字になっていない)が存在することを知っていただくことも大切なこと思います。庭の入口付近で、注意事項として説明すればいいだけなのではないでしょうか(少し手間かもしれませんが)。


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