関宿まちなみ研究所 HOME Blog Entry,Technical report 二階への上がり口 ~痕跡を読む(case4-2)~

二階への上がり口 ~痕跡を読む(case4-2)~


 前回は写真中央の開口部に格子が取り付けられていたことを書きました。今回はその続編で、少し上(天井部分)に目を転じてみることにします。建物は引き続きの高知県香南市赤岡町の「赤レンガ商家」(旧小松与右衛門邸)です。

※「赤レンガ商家」(旧小松与右衛門邸)については、下記をご覧ください。

特定非営利活動法人 すてきなまち・赤岡プロジェクト
高知県香南市赤岡町において、地域交流拠点・赤れんが商家を核として、町家の保全・活用、絵金文化の継承、まちづくりの担い手育成に取り組む団体です。

※case4-1 「座敷の上がり口に造り付けられた格子 ~痕跡を読む(case4-1)~」は下記よりご覧ください。

「座敷の上がり口に造り付けられた格子 ~痕跡を読む(case4-1)~」

天井が大引で四角く区切られている

 格子の部分から少し目を上に転じてみると、ちょうど格子が入っていた開口部のすぐ上が、大引(おおびき)で四角く区切られていることに気が付きます。

 古い町家は平屋建てであるのが一般的ですが、ミセ(町家の前面、通りに面した部分)の上部には二階が設けられていることが良くあります。二階とは言っても頭がつかえるほどの高さしかなく、居室としてよりは物置などとして使われていることが多く、「厨子二階(つしにかい)」とも呼ばれます。

※「厨子(つし)」とは、もともと収納具のことを言います。

 ミセは町家の中では比較的広い部屋で、柱を立てずに上部に二階を作るために、四角い梁(「大引(おおびき)」といいます)を柱筋ごと(3尺置きの場合が多い)に平行に何本も渡し、その間に厚い板を掛けて二階の床を作ります。一階(ミセ)の天井と二階の床が兼ねられているわけです。

 二階に上がるためには、「箱階段(はこかいだん)」や「階段」を備え付けたり、必要な時にだけ「梯子(はしご)」をかけるという場合もあるのですが、いずれにしろ、床板を張らない「上がり口」が必要になります。

 この上がり口は、二階に上がる時に頭がつかえないようにするため、階段等と同じくらいの長さがなくてはなりません。このため、階段等を大引の向きと同じ方向に備え付ける場合には特に問題はありませんが、大引の向きと異なる方向に階段等を設けたい場合には、大引と直交する方向に大引を入れて他の大引を受け、上がり口のための四角い枠を作る必要が生じます。写真に写っている四角く区切られた部分はまさにこれで、以前はここから二階に上がっていたと推測されます。

二階上がり口の痕跡

 では、この四角い枠の中をじっくりと観察して、上がり口に関係する痕跡を探すことにしましょう。

 現在は床板が入れられていて口は空いていません。板はほぼ均等な幅のモノが使われているようですが、下手側(写真下)には幅の狭い板が使われています。あっ、ありました。写真右手の大引には四角いほぞ穴が、そして左手の大引には右側の大引にあるほぞ穴とほぼ同じ大きさ、形の「埋木(うめぎ)」(部材に付けられた加工の痕を木で埋めたもの)があります。これらの痕跡は、二つの穴に横架材が差し込まれていたことを示しており、横架材は階段等を取り付けるためのものと考えられます。

 この四角い枠の中が二階への上り口であったと考えてよさそうです。現在ある天井板(二階床板)は、階段等が使われなくなった(この場所が二階への上がり口として使われなくなった)時に、上がり口(穴)を塞ぐために入れられたと考えられます。

 確認のため二階に上がり床を見てみると、上がり口の周りを囲った框(かまち)が残っています。

 さて、この四角く囲われた部分が、二階への上がり口であったことは間違いないこととなったのですが、取り付けられていた階段等の形式については詳細を確認することを忘れてしまいました。次回見学時に改めて確認をしなければなりません。


格子の前に階段・・・?

 さて、この場所に二階の上がり口があり、階段等が取り付けられていたと言われ違和感を感じられた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 その通りなんです。格子の前に階段があるのは変なんです。「絶対にない」とまで強く否定することはしませんが、せっかく作る格子の前に階段があったのでは格子が台無しです。

 この違和感は、階段と格子が同時に存在している姿を想像してしまったために生じたものです。階段は大引で枠が組まれていますから建築当初からあったと考えていいと思います。一方、格子は建築後に改造として取り付けられたものです(case4-1)。とすれば、建築当初からあった階段が取り外された後に、格子が取り付けられたと考えるのが合理的な解釈です。

 階段の撤去と格子の取り付けが同時なのか、いくらかの時間差があるのかについては、現段階では判断する材料がありません(上記の確認忘れととともに現地で再度考えたいと思います)。ただ、階段が撤去されたことと、格子が取り付けられたことの間には何らかの関連があったと考えるのが普通ではないでしょうか。

 疑問点は増えるばかりですが、ここで悩んでいても先には進まないので次の個所に移っていきたいと思います。

<つづく>

~シリーズ 痕跡を読む~

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