関宿まちなみ研究所 HOME Details 土用竹(どようだけ)の生垣

土用竹(どようだけ)の生垣


【データ】
■場 所:高知県安芸市 安芸市土居廓中伝統的建造物群保存地区
■時 代:安芸を治めた五藤家では、屋敷境の生垣の管理に関する詳細な規定を明和4年(1767)に出しており、すでに竹垣もあったと考えられる。
(参考文献『伝統的建造物群保存対策調査報告書 安芸市土居廓中』2010安芸市教育委員会)
■採 集:
2021年9月26日

道路との境には玉石を両側に並べた「石溝」がある。
生垣はその「石溝」の屋敷内側に一定の間隔を保って、密に植えられている。
この生垣には、「土用竹(どようだけ)」と呼ばれる、細く枝葉の多い竹が使われている。
土用竹を半割の孟宗竹(モウソウチク)を押縁(おしぶち)にして両側から押さえてある。

整然と見えるのは、土用竹の天端が綺麗に切り揃えられていることと、長く通された押縁によるものだ。
土用竹を切り揃えるのは各家の作業なのだろうが、押縁を補修する作業は地域の共同作業で10年程の間隔で交換をしていくのだそうだ。


 安芸市土居廓中伝統的建造物群保存地区は、武家屋敷の地割がよく旧態を保持しているとして国の重要伝統的建造物群保存地区に選定(平24.7.9)されている。

 「地割(ぢわり・ちわり)」とは土地を区画することだが、区画の境目のこともいう。土地の区画は本来目に見えるものではないのだが、境目に置かれた様々なものによって目に見える存在となる。つまり、「地割がよく旧態を保持している」というのは、“境目に置かれたもの”がよく維持されているという事なのだ。

 その最たるものが生垣や塀という事になるのだが、生垣は文字通り「生きている垣」なので放っておくと無造作に成長し、その結果境目をあいまいにしてしまう。境目としての役割を果たすためには常に同じ形であることが求められる。このことは境目を挟む両者にとって重要なことなので、境目の維持管理は少なくとも境目を挟む両者の共同作業(あるいは相互監視の作業)になるのだ。

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 「土用竹」は夏に竹の子が生えることからつけられた「蓬莱竹(ホウライチク)」の別名なのだそうだ。蓬莱竹はイネ科ホウライチク属の多年生常緑竹である。地下茎を伸ばさず株立(かぶだち)状となり、節からは多くの小枝が束状に出、その枝先には葉がやや密に束生(そくせい)する。原産は東南アジアから中国南部にかけての熱帯地域だそうだ。

※株立(かぶだち):一本の茎の根元から複数の茎が分かれて立ち上がっていること。
※束生(そくせい):植物の葉、花、茎などが集まって、束のようになっていること。

 こうして「土用竹」の植物学的な特徴を知ると、いかにも「地割」を示す生垣にふさわしい植物であることに驚く。多年生で常緑であることは、維持管理のしやすさと直結する。地下茎を伸ばさないので境界をあいまいにすることはない。株立や枝葉の束生は、侵入を防ぎ視線を遮るのに適した性質だ。そのうえ、棹(さお)の繊維を火縄銃の火縄の材料とするため日本へ渡来したというから、武家屋敷にとってこれ以上にふさわしい生垣はないとも言える。

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